日本かぼちゃばなし 16
~前回までのあらすじ~
カボタン祖父は激怒した。必ず、かの邪智暴虐のブラック畑を除かなければならぬと決意した。
「退畑するために専務に挨拶だああぁ?!そんなおかしな話があるかぃ!!もっかい電話するどオイィ!!」
血圧(汁圧)がただでさえ高いカボタン祖父は、キュウリ女が提示した条件に怒りを露わにしました。
「じぃちゃん、今日は夜遅いから明日にしよう…私もう疲れたよ」
「そうか、わかった。明日中に電話するから安心せぇ、カボタン!」
専務のロマネスコ夫人にまた会わなければならないと思うと、とたんにカボタンは憂鬱になりました。
翌日、カボタンは重い足取り(つる取り)で畑に出勤しました。案の定、畑はカボタンが辞める噂で持ちきりです。
出勤時、カボタンはチーフのキュウリ女にも一応挨拶しようとしましたが、キュウリ女はまるで蛇のように草むらへ隠れてしまいました。
カボタンは居心地の悪さを感じながらも、自分の持ち場で仕事に取りかかりました。
しばらくして、パートのカリフラワーおばさんが近づいてきました。
「ねえ、カボタンさん。この畑辞めるって本当なの?こんなに優しい野菜で溢れてる畑は、他にはないと思うよ?モッタイナイ。これからどうするの?」
カボタンはカリフラワーおばさんの摩訶不思議な言葉を聞き、優しい野菜?何それ美味しいの?という顔をしました。
「はぁ。もう次の畑決まってるので……(アッ!しまった!)」
ボーっとしていたカボタンは、つい口が滑り、転畑先が決まっていることを言ってしまいました。
「えっ?!そうなの?どこどこどこどこ??ここよりも良い所なの??何をする畑なの?」
(うわっ、めんどくせぇ…もういいや、言っちゃおう)
「えーっと、畑の名前は言わないでおきますね。英語を学びながら働ける所です。あとパソコンとか使う感じです」
カボタンは転畑先についてふんわりと分かりやすく説明しました。
カリフラワーのおばさんは、分かったような分かってないような顔をしました。
「あら、そうなの…エイゴとパソコン…でもでも、ここよりも良い所なんて無いと思うけどなー。あのね、カボタンさん、辞めるときはもっと円満な方法で辞めないとダメなのよ?こんなやり方で強引に辞めちゃったら、またいつかこの畑に戻りたい!って思ったときに、戻って来れなくなるわよ?」
(コイツの頭お花畑なの?こんな所に戻って来たいだなんて、どんだけマゾなの?二度と戻らねぇよ)
「ははは、そうですねーその通りですねー(棒読み)」
カボタンは乾いた笑いで返事をしました。
プルルルルル…プルルルルル…
突如として、希望の音が鳴りました。
ガチャ
「はい、ブラック畑キュウリ女でs「辞める前に専務に挨拶とはどういうこっちゃああぁぁ?!?!」」
カボタン祖父の再登場です。
(続く)