かぼちゃの悪魔

かぼちゃのかぼちゃによるかぼちゃのためのブログ

日本かぼちゃばなし 最終回

~前回までのあらすじ~

退畑まであと1時間というところでピンチに陥ったカボタンは、なんとか気合いでそれを乗り越え、早々に帰宅の準備を始めました。




カボタンが休憩室に入ると、そこには同僚のカボ美が寂しそうな表情でカボタンを待っていました。

「カボタンさん…とうとう退畑してしまうんですね…」

「うん!また連絡するから、たまには遊ぼうね!んじゃ!」

「う、うん…またね…」


一刻も早く新しい葉っぱに履き替えたかったカボタンの、あまりにもアッサリとした別れの挨拶に、カボ美は若干戸惑うのでした。




帰宅後、笑顔で家族に迎えられたカボタンは、久々にゆっくりと風呂に浸かり、新しい葉っぱに着替え、1年ぶりに家族揃って食卓を囲みました。


カボタン「今日のご飯(肥料)は格別だね、お母さん!」

カボタン母「フフフ、今日はカボタンの大好物を揃えたのよ♪」

カボタン祖母「じいさんが一肌(皮)脱いで、大奮発したんじゃよ~」

カボタン父「そういえば、お義理父さんのおかげで娘は助かったんですよ!カボタン、おじいちゃんに感謝しないとな!」

カボタン「うん!おじいちゃん、ありがとう!おじいちゃんの助けがなかったら、あの畑を無事に辞められたらなかったよ!」

カボタン祖父「フォッフォッフォッフォッ☆そうか、そうか!ワシのお陰か!」

カボタン弟「姉ちゃん、ほらコレ美味しいよ!」




こうして、カボタンは1年にも及ぶブラック畑の魔の手から解放され、久々に一家団欒を楽しむのでした。


めでたし☆めでたし♪


(日本かぼちゃばなし 終わり)

日本かぼちゃばなし 22

~前回までのあらすじ~

退畑まであと1時間というところでピンチに陥ったカボタンは、なんとかその場をやり過ごすことにしました。しかし、間もなくしてキュウリ女に呼び止められてしまい…




「カボタンさん。ちょっといいかしら?」

「えっ…は、はい!」

「今日でカボタンさん最終日だから、これだけは守ってほしくて。健康保険証(品質保険証)をすぐに返してほしいの。」

「(なんだ…そんなことか…)あ、はい。どうぞ」


カボタンが品質保険証を渡した後もキュウリ女は立ち去らず、神妙な顔つきで話を続けました。

「あとね、カボタンさん。やっぱり私、こんな辞め方は納得いきません」

「は?」

「お客様にも褒められて、カボタンにも良い所があるって皆に知って貰えたのに…」

「いやいやいや、でも私、今日で辞めますからね?」

「うん、それは分かっているわ。でもね、今後のカボタンさんの将来が心配なんです!次の畑でも辛いことがあったら、また同じことを繰り返すつもり?」

カボタンは嫌な予感がしました。このままではキュウリ女の説教が長くなり、最低でもあと1時間は延びるだろうと。




そしてふと、自分がノーパン(ノー葉っぱ)でいるのを思い出しました。


(そういえば、風通しが良すぎて落ち着かないなぁ…)

(ノー葉っぱで説教を受けるふざけた野菜が、この世にどれだけいるのだろうか…?)


そんなことを考えていると、カボタンはじわじわと笑いが込み上げてきました。

しかし目の前には、真剣な顔をしたキュウリ女の姿が…


(流石にここで笑っちゃダメだ。笑っちゃダメだ。ここで笑ったら説教があと2時間は延びてしまう…)

(笑ってはいけない…ガキの使い…)


カボタンはまた別の笑いが込み上げてきました。


(浜田、松本、カボタン、アウトー!デデーン)


「…!!ブフォッ…ゲホッゲホッ」

「カボタンさん、アナタ大丈夫?」

説教をしていたキュウリ女は不審に思いました。

なんとかして笑いを堪えるカボタンは、世にも奇妙な表情をしていたのです。


「あ、はい。イママデオセワニナリマシタ。デハ、シツレイシマス」


カボタンは何とかその場を切り抜け、逃げるように帰宅の準備を始めるのでした。


(続く)

日本かぼちゃばなし 21

~前回までのあらすじ~

腐った野菜の発言を聞き、カボタンは「転畑する」という自分の判断が正しかったことを痛感するのでした。




とうとう、待ちに待ったカボタン退畑の日がやってきました。

この日、カボタンは鼻歌混じりにブルガリアンダンスのステップを踏みながら華麗に出勤しました。

前日には、律儀に菓子折りと置き手紙まで準備していました。

カボタンが用意した手紙には、こう書かれていました。


ーーーーーーーーーーーーーーー

皆さんへ☆

今までたくさんお世話になりました♪この畑のこと、皆さんのこと、大好きです!また、たまには遊びに来たいと思いますので、宜しくお願いします♪
皆さんのこれからのご活躍をお祈りしてまーす☆

カボタンより♪

ーーーーーーーーーーーーーーー


カボタンは、派遣会社のパプリカお姉さん(日本かぼちゃばなし 8 参照)のテンションをそっくり真似た手紙を、菓子折りに添えて休憩室のデスクに置きました。


(フッ…冗談もいいところだな)


カボタンはさっさと自分の持ち場に行き、最後の仕事に取りかかりました。

そして、密かにカウントダウンを始めるのでした。

あと3時間…

あと2時間…

退畑まであと1時間…というところで、カボタンはやらかしてしまいました。


「ノーパン(ノー葉っぱ)かぼちゃ事変」です。


この日のカボタンは浮かれていたので、畑の水溜まりに気付かず、うっかりその場に座ってしまいました。

おかげで、カボタンが履いていたパンツ(葉っぱ)は泥だらけになる始末。

パニックに陥ったカボタンは、泥だらけになった葉っぱをくしゃくしゃに丸めてゴミ箱に投げ捨てました。

そして、脳みそ(種)をフル回転させて考えに考えた結果…


カボタンは、ノー葉っぱで残り時間を過ごすことにしました。


(あー…やっちまったなー。でもまあ、あともう少しの辛抱だし。エプロンしてるから大丈夫っしょ!)


しかし、大丈夫ではありませんでした。

「カボタンさん。ちょっといいかしら?」

あと30分で退畑というところで、ノー葉っぱのカボタンはキュウリ女に呼び止められるのでした。


(続く)

日本かぼちゃばなし 20

~前回までのあらすじ~

初めてお客さんから名指しで褒められ、仕事の楽しさを実感したカボタン。キュウリ女も嬉しそうに朝礼で皆に報告するのでした。間もなくして、トウモロコシ女がカボタンに話しかけてきました。




「ねぇ、カボタンさん…」

「あ、はい!」

「お客様に褒めてもらえてよかったわね」

「はい!ありがとうございます!」

カボタンは嬉しさでテンションMAXだったので、トウモロコシ女にも満面の笑顔で返事をするのでした。


しかし、トウモロコシ女はすぐさま表情を曇らせました。

「でもね…私、あのお客様からちょっと変なオーラを感じたの」

「…は?」

「だから…あのお客様は、どこかにダークなものを抱えていると思うの」

「は?普通に明るい方でしたけど」

カボタンは怪訝な顔をしました。トウモロコシ女が何を言ってるのか、カボタンにはまるで分かりません。


「いいえ。私はあのお客様から闇を感じたわ。カボタンさんって、たぶん闇のある人(野菜)を引きつけやすいのね…だから、これからはもっとレベルの高いお客様に好かれるようになった方が良いと思うの。私みたいに♪」

「……」


カボタンは絶句しました。

そして、まるで腐敗した生ゴミを見るような目つきでトウモロコシ女を見つめました。

カボタンの表情があまりにも冷ややかだったので、トウモロコシ女は一瞬怯みました。

「ま、まあ高貴なお客様に好かれる方が、カボタンさんにもメリットがあると思うし!」

「……」

カボタンの軽蔑に満ちた眼差しに気まずくなったトウモロコシ女は、足早にその場を後にしました。

先程まで最高潮だったカボタンのテンションは、ものの数秒で急降下しました。タワーオブテラーもビックリです。


(やっぱりこの畑は私の居場所じゃないな…こんな腐った野菜と一緒にいるべきじゃない)


カボタンは、自分の決意が正しかったことを改めて痛感するのでした。


(続く)

日本かぼちゃばなし 19

~前回までのあらすじ~

キュウリ女が泣いていたことを知ったカボタンは動揺してしまいました。そして動揺してしまった自分に動揺してしまうのでした。




カボタン退畑まであと数日。この日もカボタンはルンルン気分でスキップしながら畑に出勤しました。

もうすぐブラック畑を辞められると思うと、カボタンは幸せいっぱいだったのです。


(新しい畑に入畑するまで1ヵ月あるし、ここを辞めた後は思う存分リフレッシュしちゃおうっと☆)


カボタンの幸せオーラは、そのままお客さんにも伝わりました。

畑にお客さんとして来ていたとある女性が、ニコニコ笑顔のカボタンに声をかけました。

心に余裕たっぷりのカボタンは、誠心誠意対応しました。

その女性はカボタンをすっかり気に入り、お客様アンケートハガキの『1番対応の良かった野菜』欄にカボタンの名前を書きました。さらに備考欄には、


“カボタンさんの対応がとても素晴らしかったです!”


というメッセージまで添えられていました。


このハガキの内容は翌朝までにチーフのキュウリ女はもちろん、本部にいる専務のロマネスコ夫人にまで知れ渡りました。

実は、お客さんに名指しされたのは、その畑の中でカボタンが初めてだったのです。


翌日の朝礼で、チーフのキュウリ女は皆の前でハガキを読み上げ、カボタンを満面の笑顔で誉めました。キュウリ女はこの出来事を心から喜んでいるようでした。

カボタンは嬉しさが込み上げ、仕事の楽しさをこのとき初めて感じるのでした。


(あれ…私、このブラック畑の労働環境は嫌いだったけど、仕事内容自体は嫌いじゃないのかもしれない…)


カボタンの気持ちが少し揺れ動いた矢先、トウモロコシ女が苦虫を噛み潰したような顔でカボタンに近づいてきました。


「ねぇ、カボタンさん…」


(続く)

日本かぼちゃばなし 18

~前回までのあらすじ~

祖父の活躍のおかげで専務への挨拶が不要になったカボタンは、心に余裕を持てるようになりました。そして、トウモロコシ女のマウンティングも華麗にスルーするのでした。



退畑まで1週間を切ったカボタンは、ブラック畑に洗脳された野菜達に「モッタイナイ」「こんなに良い畑は他にはない」「忍耐が足りない」「モッタイナイ」「辞め方が強引だ」「専務に失礼」「モッタイナイ」「社会人失格」「どこの畑も同じだ」「自己中すぎる」「モッタイナイ」「ワガママだ」「モッタイナイ」等々、多数のありがたい御言葉と蔑視を浴びながらも、残りわずかなブラック畑ライフを謳歌していました。


(もしも新しい畑で何か嫌なことがあっても、多分ここよりはマシだろうなー)


カボタンは、もう何を言われても動じない、鋼のメンタルを手に入れていたのです。

カボタンは、自分が人の心(野菜の心)を失ってしまったのではないかと、少し心配になりました。



ある日、いつも通りげっそりした同僚のカボ美が、カボタンに話しかけてきました。

「カボタンさん…言おうかどうしようか迷ったんだけど…」

「カボ美さん、どうしたの?そんなにげっそりした顔して。ちゃんと肥料吸収してる?」

「そうそう私、最近重量がかなり減っちゃってさー……って、そうじゃなくて!チーフのキュウリ女さんのことなんだけど」

「ほほう?何かあったの?」

「実は私、見ちゃったの。カボタンさんが本当に辞めることになった後、キュウリ女さんが加工場の裏で密かに泣いてるのを…」

「えっ…」

カボタンにとって、これはかなり意外でした。


「キュウリ女さん、確かにカボタンさんには結構厳しくしてたけど…彼女、そんなに悪い野菜じゃないと思うの。確かに専務に洗脳されてる感じはあるし、めちゃくちゃ厳しいし、おかしなこと要求してくる時もあるけど、彼女なりに私達のこと育てようとしてたんだと思う」

「うっ…」

「ごめん、この畑やキュウリ女さんのやり方を擁護するつもりは一切無いんだけど、彼女がひっそりと泣いてる姿を見て、なんかそう感じたの…」

「そうか…わかった。教えてくれてありがと、カボ美さん」


カボタンは、自分が少し動揺しているのが分かりました。そして、少しだけキュウリ女に対する情が湧いてくるのを感じました。


(この畑でこんなに色々と嫌な思いしたのに、キュウリ女が泣いてたことぐらいで、なんで情なんて湧くんだよ…)


カボタンの鋼のメンタルに、少しだけヒビが入った瞬間でした。


(続く)

日本かぼちゃばなし 17

~前回までのあらすじ~

ギスギスした雰囲気の中、カボタンは何とか畑仕事をこなしていました。その時、またまたカボタン祖父から電話が…




「辞める前に専務に挨拶に行かんにゃならんとは、どういうこっちゃああぁぁ?!ふざけとんのかオイィ!!」

カボタン祖父のボルテージは既に最高潮を迎えていました。

「分かりました、専務への挨拶も結構です。カボタンさんは挨拶無しで退畑頂いて結構です。」

キュウリ女はゲッソリした顔でアッサリと要求を呑みました。カボタン祖父の頑固さには敵わないことを学んだのでしょう。

「そうか!分かった。はよ辞めさせぇよ!」ガチャッ!


祖父のお陰であまりにもアッサリと悩みが解決したカボタンは、晴れやかな気持ちで仕事に取りかかりました。

そして、カボタンのために嫌われ役に徹してくれた祖父に、心の底から感謝するのでした。




しばらくして、トウモロコシ女が不気味な笑顔でカボタンに近づいてきました。

「カボタンさん♪」

「は、はい…何でしょうか」

トウモロコシ女は、話が終わるまで逃げさせはしないと言わんばかりに、カボタンの腕(つる)を強く掴みました。

「カボタンさん、本当に辞めちゃうのね。寂しくなります…そういえば!私、最近英会話教室に通い始めたの~♪昨日も先生から宿題出されてちゃって、帰ったら早速やらなきゃいけないんですよ~もう全っ然分かんなくて!Be動詞って何?みたいな?カボタンさんはBe動詞って分かりますぅ?分からないですよね?キャハハッ♪」

「は、はぁ…」

Be動詞で躓いている相手に何を言っても無駄だと判断し、カボタンはやる気の無い返事をしながら、この場をやり過ごすことにしました。


「働きながら習い事するのって大変よねぇ~。でも、私ならこの畑で働きながら、英語の勉強だって両立できると思ってるわ♪カボタンさんには無理かもしれないけど、私ならできますっ!」

トウモロコシ女の口は笑っていますが、目が全く笑っていません。カボタンは、この女の根拠のない自信は一体どこから来ているのか不思議でなりませんでした。


「わー凄いですねー頑張って下さい」

「カボタンさんは新しい畑に行っちゃうんだろうけど、慣れない所で働きながら勉強なんてできるのかなぁ?せっかく慣れてきたこの畑を辞めちゃうなんて、本当にモッタイナイよ~。ここで働きながらだって、私みたいにいくらでも勉強できるのに~」

「はいそうですねートウモロコシ女さんは私とは違って凄いですねー(棒読み)」

「そう!私はアナタとは違うの!まあ、また戻ってきたかったらいつでもいらっしゃい♪こんな辞め方だともう戻ってくるのは難しいだろうけど♪」

「そうですねー」


(これが今巷で話題のマウンティング女子ってヤツかぁ…生で見たの初めてだなぁ…)


カボタンはまるで動物園で珍獣を発見したかのように、トウモロコシ女の開ききった瞳孔を眺めるのでした。


(続く)