かぼちゃの悪魔

インド彼氏とのロマンスコメディーを書こうとして徐々に迷走し始めたブログ

外資かぼちゃばなし 9

~前回までのあらすじ~

外資系畑で平和ボケし始めていたカボタンでしたが、現実はそう甘くはありませんでした。



突然上司からビリっけつ宣告を受けたカボタンは、自分を情けなく思いました。


(同僚のキャロラインちゃんは優秀だし美野菜だけど、私はトロいしミス多いし皮荒れてるしなぁ…)


皆が優しく接してくれる畑環境が心地良くて、ついつい甘えてしまっていたカボタン。

しかしその優しさは、社会人(社会野菜)としての基本的なマナーであることに、彼女はようやく気付きました。

誰からも怒られたり詰められたりせず、淡々と業務をこなし、黙々とランチをとり、きっかり定時に上がる。

皆それぞれに個人プレーをし、互いに干渉し合わない環境。


ーーーこの畑、人間関係(野菜関係)は本当に楽ですよ。割と皆サバサバしてるのでーーー


入畑前に人事がそう言っていました。

恵まれた環境のはずなのに、彼女は一抹の寂しさを感じました。

そして、あの日の甘酸っぱく切ない記憶が蘇るのでした。






ーーーうっ…うっ…もう…わ、私、ダメですーーー


ブラック畑で働いて半年が経つ頃、カボタンは大きな売り場を任されていました。その膨大な業務量に追いつけず容量オーバーになったカボタンは、とうとうランチの時間に野菜汁を噴出させてしまうのでした。


「……」

泣きじゃくるカボタンの目の前で、クールな顔立ちのズッキーニ先輩が黙ってランチをとっていました。

ズッキーニ先輩には普段からそっけない態度を取られていたので、カボタンは彼女のことが少し苦手でした。


「……ごちそうさまでした」

まだランチが半分以上残っているにも関わらず、ズッキーニ先輩はさっさと売り場へと戻って行ってしまいました。


(先輩…やっぱり冷たいなぁ)


カボタンは涙(汁)が止まるのを待ってから、トボトボと自分の持ち場へ戻りました。


「えっ…?」

なんとそこには、せっせと働くズッキーニ先輩がいるではありませんか。


「あ…カボタンさん…」

「えっ…ズッキーニ先輩?どうしてここに?」

「あ、いや…カボタンさん大変そうだったんで、手伝おうと思って…このエリアはもう終わりました」

「えっ…そんな…すみません、すみません、ありがとうございます!ありがとうございます!!」

カボタンは驚きと嬉しさのあまり、せっかく止まった野菜汁が再度噴出するのでした。


「いえ、全然大丈夫ですよ」ニコッ


その時初めて、ズッキーニ先輩はカボタンに満面の笑顔を見せるのでした。






(トクン…)






カボタンの中に潜んでいた百合の花が開いた瞬間であった。



(続く)