かぼちゃの悪魔

インド彼氏とのロマンスコメディーを書こうとして徐々に迷走し始めたブログ

日本かぼちゃばなし 18

~前回までのあらすじ~

祖父の活躍のおかげで専務への挨拶が不要になったカボタンは、心に余裕を持てるようになりました。そして、トウモロコシ女のマウンティングも華麗にスルーするのでした。



退畑まで1週間を切ったカボタンは、ブラック畑に洗脳された野菜達に「モッタイナイ」「こんなに良い畑は他にはない」「忍耐が足りない」「モッタイナイ」「辞め方が強引だ」「専務に失礼」「モッタイナイ」「社会人失格」「どこの畑も同じだ」「自己中すぎる」「モッタイナイ」「ワガママだ」「モッタイナイ」等々、多数のありがたい御言葉と蔑視を浴びながらも、残りわずかなブラック畑ライフを謳歌していました。


(もしも新しい畑で何か嫌なことがあっても、多分ここよりはマシだろうなー)


カボタンは、もう何を言われても動じない、鋼のメンタルを手に入れていたのです。

カボタンは、自分が人の心(野菜の心)を失ってしまったのではないかと、少し心配になりました。



ある日、いつも通りげっそりした同僚のカボ美が、カボタンに話しかけてきました。

「カボタンさん…言おうかどうしようか迷ったんだけど…」

「カボ美さん、どうしたの?そんなにげっそりした顔して。ちゃんと肥料吸収してる?」

「そうそう私、最近重量がかなり減っちゃってさー……って、そうじゃなくて!チーフのキュウリ女さんのことなんだけど」

「ほほう?何かあったの?」

「実は私、見ちゃったの。カボタンさんが本当に辞めることになった後、キュウリ女さんが加工場の裏で密かに泣いてるのを…」

「えっ…」

カボタンにとって、これはかなり意外でした。


「キュウリ女さん、確かにカボタンさんには結構厳しくしてたけど…彼女、そんなに悪い野菜じゃないと思うの。確かに専務に洗脳されてる感じはあるし、めちゃくちゃ厳しいし、おかしなこと要求してくる時もあるけど、彼女なりに私達のこと育てようとしてたんだと思う」

「うっ…」

「ごめん、この畑やキュウリ女さんのやり方を擁護するつもりは一切無いんだけど、彼女がひっそりと泣いてる姿を見て、なんかそう感じたの…」

「そうか…わかった。教えてくれてありがと、カボ美さん」


カボタンは、自分が少し動揺しているのが分かりました。そして、少しだけキュウリ女に対する情が湧いてくるのを感じました。


(この畑でこんなに色々と嫌な思いしたのに、キュウリ女が泣いてたことぐらいで、なんで情なんて湧くんだよ…)


カボタンの鋼のメンタルに、少しだけヒビが入った瞬間でした。


(続く)