日本かぼちゃばなし 22
~前回までのあらすじ~
退畑まであと1時間というところでピンチに陥ったカボタンは、なんとかその場をやり過ごすことにしました。しかし、間もなくしてキュウリ女に呼び止められてしまい…
「カボタンさん。ちょっといいかしら?」
「えっ…は、はい!」
「今日でカボタンさん最終日だから、これだけは守ってほしくて。健康保険証(品質保険証)をすぐに返してほしいの。」
「(なんだ…そんなことか…)あ、はい。どうぞ」
カボタンが品質保険証を渡した後もキュウリ女は立ち去らず、神妙な顔つきで話を続けました。
「あとね、カボタンさん。やっぱり私、こんな辞め方は納得いきません」
「は?」
「お客様にも褒められて、カボタンさんにも良い所があるって皆に知って貰えたのに…」
「いやいやいや、でも私、今日で辞めますからね?」
「うん、それは分かっているわ。でもね、今後のカボタンさんの将来が心配なんです!次の畑でも辛いことがあったら、また同じことを繰り返すつもり?」
カボタンは嫌な予感がしました。このままではキュウリ女の説教が長くなり、最低でもあと1時間は延びるだろうと。
そしてふと、自分がノーパン(ノー葉っぱ)でいるのを思い出しました。
(そういえば、風通しが良すぎて落ち着かないなぁ…)
(ノー葉っぱで説教を受けるふざけた野菜が、この世にどれだけいるのだろうか…?)
そんなことを考えていると、カボタンはじわじわと笑いが込み上げてきました。
しかし目の前には、真剣な顔をしたキュウリ女の姿が…
(流石にここで笑っちゃダメだ。笑っちゃダメだ。ここで笑ったら説教があと2時間は延びてしまう…)
(笑ってはいけない…ガキの使い…)
カボタンはまた別の笑いが込み上げてきました。
(浜田、松本、カボタン、アウトー!デデーン)
「…!!ブフォッ…ゲホッゲホッ」
「カボタンさん、アナタ大丈夫?」
説教をしていたキュウリ女は不審に思いました。
なんとかして笑いを堪えるカボタンは、世にも奇妙な表情をしていたのです。
「あ、はい。イママデオセワニナリマシタ。デハ、シツレイシマス」
カボタンは何とかその場を切り抜け、逃げるように帰宅の準備を始めるのでした。
(続く)