外資かぼちゃばなし 2
~前回までのあらすじ~
ブラック畑から解放されて、ストレスフリーなスローライフを満喫していたかぼちゃのカボタン。ある朝、突如として電話がかかってきました。
「はい、もしもし。カボタンです」
「あ、俺だけど」
「…オレオレ詐欺ですか?」
「違うってば!俺、カボ太郎!」
「ああ!カボ太郎か…」
原田知世になるべくスローライフを謳歌しすぎていたカボタンは、彼氏のカボ太郎のことをすっかり忘れていました。
カボ太郎とはカボタンの転畑活動中に気まずくなって以来(日本かぼちゃばなし 7 参照)ロクに話もしていなかったのです。
「今日ヒマ?」
「あ、ごめん。私今忙しくて。あと、ちょっと申し訳ないんだけど…」
「何?」
「私達、別れよう?」
「…は?」
「いやだから、別れよう?」
「いやいやいや、なんで?!」
突然のことに、カボ太郎は動揺を隠しきれませんでした。
「だって私達、性格(性質)合わないもん」
「そ、そんな…とりあえず直接話し合おうぜ?」
「うん、いいよ」
その後間もなくして、カボ太郎はかぼちゃの馬車に乗ってカボタンに会いにやってきました。
カボ太郎は開口一番から泣き始めました。
「うっ…うっ…なんでだよぅ。いきなり別れるだなんて…1年も付き合った仲なのに…」
「うーん…1年っていっても、月1回か2回しか会ってないよね?だから実質2週間ぐらいじゃない?」
「もう一度だけチャンスをくれないか?な?またやり直そう?」
「…そこまで言うなら、分かった。もっかいやり直してみるか」
カボタンはカボ太郎の泣き落としにアッサリ折れました。
実はカボタン、男野菜の涙(汁)に弱いのです。
その翌朝、カボ太郎から電話がかかってきました。
「はい、もしもし。カボタンです」
「あ、カボタン?元気?」
「うん、まあまあ」
「あのさ~申し訳ないんだけど、やっぱり俺達、別れようぜ?」
カボ太郎の口から出た思いもよらぬ言葉に、カボタンは耳を疑いました。そして、彼の声は何故かハツラツとしていました。
「…は?昨日のは何だったの?」
「いや~やっぱりさ、俺達気が合わないなーと思ってさ」
「…それ、私が先に言ったよね?」
「お前さ、たまに男野菜のプライド傷つけるんだよね」
カボタンは呆れて言葉が出ませんでした。
(こ、こいつ…自分が振られた事が気に食わないからって…)
カボ太郎の言動は、まるで振られた立場を振る立場に塗り替えるための策略のようでした。
負け犬の遠吠えならぬ、負け犬の下剋上。
必殺☆偽装復縁&別れ話返し。
「まあ、そんなに落ち込むなよ」
「いや、落ち込んでねーから」
「お前には他にもっと良い野菜がいるって!」
「人(野菜)の話聞いてる?」
「幸せになれよ!いつか誰かと結婚(受粉)できると良いな!じゃあな!」
カボ太郎は勝ち誇ったようにそう言い放ち、電話を切りました。
(こんなプライドの高い野菜野郎なんて、もう懲り懲りだわ…)
カボタンはせっかくのスローライフが台無しになったことを一瞬嘆きましたが、すぐさま気を取り直して美容院を予約するのでした。
(続く)