かぼちゃの悪魔

インド彼氏とのロマンスコメディーを書こうとして徐々に迷走し始めたブログ

外資かぼちゃばなし 7

~前回までのあらすじ~

外資系畑に入畑したカボタンは、初日にして幻の「定時上がり」を目の当たりにし、興奮のあまり野菜汁がほとばしり階段から転げ落ちるのでした。



初日の研修を無事に終えたカボタンは、日が沈む前に帰宅できることに感激しました。


「これから毎日こんな素晴らしい野菜生活が続くだなんて、夢みたいだわ…!」

「あら、アリさん。こんにちは!フフフフフッ!」

「あ、ひこうきぐも!綺麗だなぁ…フフフフッ♪」

「虫食い♪なんて♪気にしないわ~♪」

「花ぺちゃ♪だ~ってだ~ってだって♪お気に入り♪フフフフッ」


カボタンはブラック畑で野菜以下の扱いを受けていたので、今ではどんな些細なことにも幸せを感じるようになり、完全にキャラが変わってしまいました。


外資系畑の研修は1ヶ月間続きました。

その期間中は毎日、セロリのセロリーヌさんがトレーナーとして付きっきりでカボタン達を優しく指導するのでした。


「カボタンちゃん、ほら、おやつ食べながらで良いからね!研修もあともう少しだから、頑張ろう!」

セロリーヌさんはガッツポーズをして、カボタンを励ましました。その満面の笑顔には母性愛が満ち溢れていました。


「えっ…?おやつ食べながら仕事して良いんですか?!」

カボタンは思わず手(つる)を止め、目(芽)を丸くしました。


「えっ…?うん、皆普通に食べてるから気にしないで!ほら見て、上司の白菜鍋さんも今おせんべい食べてるでしょう?」

カボタンはこっそり白菜鍋さんの方を覗きました。確かにボリボリ…ボリボリ…という音が聞こえてきます。


「本当だ…凄い…うっうっ…お、美味しい…おやつ美味しいです、セロリーヌさん!!」

「あらあら(笑)もっとたくさん食べて良いのよ!」

「はい!ありがとうございます!」


セロリーヌさんの優しさに思いっきり甘えながら、カボタンはふと、ブラック畑で働いていたパートさんのことを思い出しました。






ーーートウモロコシ女さん、私、膀胱炎になったんですーーー


パートの豆苗さんが、申し訳無さそうな顔をしながら、トウモロコシ女にそう切り出しました。

豆苗さんは毎日、トイレ(洗い場)に行く暇も無いほど熱心に働く、というよりも働かざるを得ない状況に追い込まれているパートさんでした。


「へぇ。そうなんですね」

トウモロコシ女の返事は素っ気ないものでした。

「すみません、なので、あの…近々、病院に行っても良いですか?」

「あー…わかりました。考えときます」


弱々しく辛そうな豆苗さんの顔と、冷酷なトウモロコシ女の興味の無さそうな声を、カボタンはよく覚えていました。


その翌日も、豆苗さんはいつものように働いていました。


その翌日も、


その翌日も…






…ブルッ


カボタンは身(実)震いしました。


「カボタンちゃん、どうしたの?大丈夫?もう一度説明するね?」

「あっ、すみません!ちょっとボーッとしてました!はい、次は何でしょう?頑張って覚えます!」


セロリーヌさんの心配そうな顔を見て、カボタンは我に返りました。


そして、ブラック畑時代のフラッシュバックが一刻も早く消えて無くなるように祈るのでした。



(続く)