外資かぼちゃばなし 12
~前回までのあらすじ~
ダンスパーティーの打ち上げをきっかけにスリランカ産アボカドのドーナー・パビットラー・アボカディー・ドッサナーヤカと仲良くなったカボタンは、ドーナー・パビットラー・アボカディー・ドッサナーヤカの太陽のように明るい人柄(銘柄)に影響を受けてどんどん元気になり、仕事の悩みも忘れ、ドーナー・パビットラー・アボカディー・ドッサナーヤカとよく出かけるようになりました。
「カボタンちゃん、今から国際交流フェスティバルに行ける?色んな産地の農産物に会えるョ。私の友達も紹介したいョ」
祖父母の家でゴロゴロしていたカボタンは、突然アボカディーから電話を受けました。
「え、何それ楽しそう。何時までやってるの?」
「午後4時!だから早く行かなきゃなの。もうすぐ終わっちゃうョ」
「え!?ちょ、あと2時間しかないじゃん!早く言ってよー。待ってて、40秒で支度するわ」
「そだよネーごめんネー待ってる」
アボカディーからの誘いはいつも突然でしたが、既にこのパターンに慣れていたカボタンは、ムスカに誘拐されたシータを助けに行くパズー並みのスピードで支度を済ませ、早々にイベント会場へと向かいました。
アボカディーと合流してイベント会場に到着すると、そこはまるで異国でした。
「アボちゃん…これは……」
会場にいる外国産農産物の多さに圧倒されたカボタンは、言葉を失いました。
「ねー、意外デショー?この地域にも外国産農産物はたくさんいるんだョ」
「そっか…こんな田舎にも外国産がこんなにいるんだね。日本じゃないみたいだ…なんか緊張してきた…」
「えー全然大丈夫。緊張しなくて良いョ」
そう言ってずんずん会場の奥に進んで行ったアボカディーは、早速友人らしき農産物に声をかけられ、親しげに肩を組んで流暢な英語で会話を始めました。
その様子を少し遠くから眺めていたカボタンは、そわそわしながら辺りを見渡しました。
大勢の人前(農産物前)に出るのが苦手なカボタンは、手(つる)に汗(汁)が滲んでくるのを感じました。
「あ、コリアンちゃーん!コッチ、コッチ!」
アボカディーにコリアンと呼ばれたその農産物は、何故かご当地マスコットの着ぐるみを着ていました。
「あ!アボーちゃん」トテトテ…
「コリアンちゃん、何それ?!」
「ゴ、ゴメン!この着ぐるみ、歩幅がめっちゃ小さいの!」トテトテ…
「コリアンちゃん、聞こえるー?ちゃんと私達の顔、見えるー?」
「うん、なんとか!」トテトテ…
流暢な日本語で展開されるそのやり取りが微笑ましかったので、カボタンは奇妙なご当地マスコットに挨拶をしました。
「初めまして!日本産かぼちゃのカボタンです!」
「あ、初めまして!私、インドネシア産コリアンダーの、コリアンです!」トテトテ…
マスコットの無表情な顔に似合わないハツラツとした声が、内部から聞こえてきました。
「ちょっともう、これ脱ぐー!」
声の主はそう言うと、すぐに着ぐるみを脱ぎ捨てました。
カボタンの目(芽)の前に、小柄で黒髪ストレートの可愛らしい野菜少女が姿を現しました。
(続く)