外資かぼちゃばなし 19
〜前回までのあらすじ〜
カボタンとポテッタントの記念すべき初のSkypeは、案の定『何一つ会話が成立しないSkype』という結果になり、会話は何一つ成立しませんでした。それはつまり、記念すべき初のSkypeは、やはり、両者の間で何一つとして会話が成立しなかった。という事実であり、つまり、そういうことなのであります。
「君はとても可愛いね」
これは、ポテッタントが発した言葉の中で、カボタンが唯一聞き取れたフレーズでした。
「ありがとう…」
カボタンは恥ずかしそうに頬(皮)を桜色に染め、視線を外しました。
Skypeのビデオを繋いだまま、ポテッタントは真剣な眼差しでカボタンを見つめ、テキストメッセージを送りました。口語では伝わらないと判断したのでしょう。
"あの…もし良ければ、僕とお付き合いをしてくれませんか?"
"あ、オッケー☆"
カボタンは即答しました。
これが、カボタンとポテッタントの馴れ初めでした。
翌日。
カボタンは意を決して、同期のキャロラインに昨夜の出来事を報告することにしました。
「え?インド産ジャガイモと付き合うことになった?そっかー、全っっ然良いと思うよー。今の時代、国際恋愛とか普通だし。品種や産地に関わらず、多種多様で良いよね」
キャロラインはその美しい完璧なニンジンのフォルムを少しも崩すことなく、カボタンを笑顔で祝福しました。
カボタンはホッとし、ポテッタントの写真をキャロラインに見せました。
「この人(芋)なんだけど、名前はポテッタントっていうの」
「おお、鼻高いな!やっぱりインド産は顔濃いね」
「でしょ?私、自分が平たいかぼちゃ族だから、濃い顔が好きなんだよね。性格も優しいし、もう即答しちゃった!」
「そっか、でもまだ彼とは実際に会ったことないんだよね?」
「うん…そうなんだ。やっぱりネットの出逢いで外国産農産物と付き合うのって無謀かな?」
「いや、カボタンちゃんが気にならないなら、きっと大丈夫だよ。早く彼に会えると良いね。でもなんかグローバルで凄いね、ワクワクする!」
「うん!まずはポテッタントと口語でコミュニケーション取れるように、これから英語頑張るね!」
「え…ちょ、そこから?!マジか…が、頑張れ!応援してる!」
キャロラインのエールを受け、報告して良かった!と、カボタンは心から思いました。
それからほぼ毎日、雨ニモマケズ風ニモマケズ彼女ノヒドイボキャブラリーニモマケズ、ポテッタントは忍耐強くカボタンを指導しました。
カボタンはひたすら、ポテッタントとのコミュニケーションを構築するためだけに、毎日毎日、英単語帳を読み漁るのでした。
後にこれが上司とのバトルに繋るとはつゆ知らず…
(続く)